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法令・義務

アスベスト法令義務ガイド|大気汚染防止法・石綿障害予防規則の要点と違反ペナルティ

アスベスト規制は2022年4月で報告義務化、2023年10月で有資格者による調査が必須となり、急速に厳格化が進んでいます。本記事では大気汚染防止法・石綿障害予防規則・建築物石綿含有建材調査者制度の要点と、違反時の罰則・届出書類・労基署対応までを施設管理担当者向けに整理しました。

最終更新:2026年5月27日 執筆:寺尾聡(運営者・施設管理情報担当)

Q. アスベスト事前調査は義務ですか?

A. 2023年10月の大気汚染防止法改正により、解体・改修工事前の事前調査が義務。有資格者(建築物石綿含有建材調査者)が実施し、結果を発注者に書面提出する義務がある。

※大気汚染防止法第18条の15(2026年4月時点)

この記事の結論(3行サマリ)

  • 義務の根拠:大気汚染防止法(2022/4 報告義務化・2023/10 有資格者必須)と石綿障害予防規則
  • 違反リスク:作業基準違反で懲役または罰金、報告漏れで30万円以下の罰金、重大事故では民事賠償
  • 対策の基本:建築物石綿含有建材調査者が在籍する業者を選び、電子報告・労基署届出を確実に実施する

規制する法律の全体像

アスベスト対策は複数の法令が重なり合って適用されます。発注者・元請・下請・調査者それぞれに異なる義務が課されます。

アスベスト規制に関わる主な法令
法律 主な目的 主な義務 所管
大気汚染防止法 周辺住民への飛散防止 事前調査・報告・作業基準遵守・特定粉じん排出等作業届出 環境省→都道府県
石綿障害予防規則 労働者の健康障害防止 作業主任者選任・特別教育・健康診断・記録40年保存 厚生労働省→労基署
労働安全衛生法 労働者の安全衛生 計画届(工事14日前まで)、有害物質取扱い 厚生労働省→労基署
廃棄物処理法 廃棄物の適正処理 特別管理産業廃棄物としての処分・マニフェスト発行 環境省→都道府県
建設リサイクル法 建設廃材の再資源化 分別解体・届出 国土交通省・環境省

大気汚染防止法 2022・2023改正の要点

大気汚染防止法(大防法)は、アスベスト飛散による周辺住民への健康被害を防ぐための法律です。2020年改正により、規制対象建材・調査義務・報告義務が大きく拡張されました。

2022年4月施行:事前調査結果の電子報告義務化

  • 解体工事:床面積80m²以上の建築物
  • 改修工事:請負金額100万円以上(税込)の建築物
  • 工作物の解体・改修:請負金額100万円以上
  • 「石綿事前調査結果報告システム」での電子報告が必要
  • 労基署(厚労省)と都道府県(環境省)に一括報告

2023年10月施行:有資格者による事前調査の義務化

  • 事前調査は建築物石綿含有建材調査者(一般・特定・一戸建て等)または同等の資格者が実施
  • 無資格者による調査結果は法的に有効と認められない
  • 発注者は、調査者の資格証を必ず確認

規制対象建材の拡大

2021年改正により、レベル3建材(成形板・床タイル等)も大防法の規制対象に加わりました。それまで規制対象外だった成形板等についても、飛散防止措置・破断防止工法が求められます。

石綿障害予防規則の義務内容

石綿障害予防規則(石綿則)は労働安全衛生法に基づき、作業に従事する労働者の健康障害を防ぐための規則です。

石綿障害予防規則が定める主な義務
義務項目 内容 根拠条文
石綿作業主任者の選任 除去・封じ込め・囲い込み作業の指揮監督 石綿則第19条
特別教育の実施 作業従事者全員に法定の特別教育を実施 石綿則第27条
健康診断 従事者に対し6か月に1回の特殊健康診断 石綿則第40条
作業計画の作成 除去方法・養生・粉じん対策を含む計画書 石綿則第4条
作業記録の保存 従事者の作業内容・期間を40年間保存 石綿則第35条
事前調査結果の説明 発注者・労働者・現場見やすい場所への掲示 石綿則第3条

注意:作業記録の40年保存

石綿関連疾患は曝露から数十年経過して発症することが多く、作業記録は40年間の保存義務があります。労働者の健康管理上極めて重要な書類のため、業者選定時に「記録保管体制」も必ず確認しましょう。

建築物石綿含有建材調査者の資格

2023年10月以降、事前調査を担う「建築物石綿含有建材調査者」は厚労省・国交省・環境省の共管で登録・認定されている国家資格相当の資格です。

資格の区分

  • 特定建築物石綿含有建材調査者:すべての建築物の調査が可能
  • 一般建築物石綿含有建材調査者:戸建て住宅・共同住宅の住戸内を除く全建築物
  • 一戸建て等石綿含有建材調査者:戸建て住宅・共同住宅の住戸内のみ

取得要件

建築関連の実務経験(学歴に応じ2〜11年)が必要で、講習修了試験に合格することで資格が付与されます。発注者は調査者の資格証・登録番号を見積もり・契約段階で必ず確認してください。

違反時のペナルティと事故事例

法律上の制裁

  • 大防法 第18条の14(作業基準遵守違反):3か月以下の懲役または30万円以下の罰金
  • 大防法 報告義務違反:30万円以下の罰金
  • 石綿則・労安法違反:6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
  • 廃棄物処理法違反:5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(不法投棄等)

実務上のリスク

  • 近隣住民の健康被害が認定された場合の民事損害賠償責任
  • 労働者の石綿肺・中皮腫等発症時の労災・損害賠償請求
  • 労基署の立入検査・作業停止命令による工期遅延
  • 違反業者として自治体公表される信用毀損
  • 保険(請負業者賠償責任保険等)の支払い条件が「法令遵守」を前提とするケース

届出書類・保存記録の一覧

アスベスト工事で必要な届出書類・保存記録
書類名 提出先/保存者 期限・保存期間
事前調査結果報告(電子報告) 労基署+都道府県 工事着手前
特定粉じん排出等作業届出(レベル1・2) 都道府県等 作業開始14日前まで
建設工事計画届(レベル1) 労基署 作業開始14日前まで
事前調査結果記録 発注者・施工業者 工事終了後3年
作業記録 施工業者 40年
特別管理産業廃棄物管理票(マニフェスト) 排出事業者 5年

工事スケジュールの組み方

アスベスト工事は届出期限の都合で着手まで最低3〜4週間を見込む必要があります。

標準的なアスベスト工事スケジュール
時期 作業内容 担当
工事計画 起算 建築物石綿含有建材調査者による事前調査 調査者・発注者
調査後1〜2週間 分析(必要時)・補助金申請 分析機関・発注者
工事14日前まで 労基署・自治体への届出、電子報告 施工業者
工事直前 近隣周知・掲示板設置・養生 施工業者
工事中 除去・大気濃度測定・記録 施工業者・分析機関
工事後 マニフェスト回収・報告書整備・記録保存 発注者・施工業者

適切な業者に依頼するための確認事項

  • ✅ 建築物石綿含有建材調査者の在籍(資格証の写し)
  • ✅ 石綿作業主任者の選任体制
  • ✅ 作業従事者全員の特別教育修了状況
  • ✅ 過去の事前調査結果報告(電子報告)実績
  • ✅ 特別管理産業廃棄物処分業者との契約・マニフェスト発行体制
  • ✅ 請負業者賠償責任保険・施設賠償責任保険への加入

業者選びと費用の詳細はアスベスト調査・除去の費用相場2026もご参照ください。

よくある質問

アスベスト事前調査は法律で義務ですか?
はい。大気汚染防止法および石綿障害予防規則により、建築物・工作物の解体・改修工事を行う発注者・施工業者は、工事着手前にアスベスト含有の有無を事前調査することが義務付けられています。
報告義務が発生する工事の規模は?
①建築物の解体工事で床面積80m²以上、②建築物の改修工事で請負金額100万円以上(税込)、③工作物の解体・改修工事で請負金額100万円以上のいずれかに該当する場合、事前調査結果を労基署・都道府県等に電子報告する義務があります。
建築物石綿含有建材調査者の資格は誰が必要?
2023年10月1日以降に着手するすべての事前調査は、「建築物石綿含有建材調査者」または同等の資格を有する者が実施しなければなりません。発注者は、調査を委託する業者にこの資格者が在籍しているかを必ず確認してください。
違反した場合の罰則は?
大防法違反では作業基準違反で3か月以下の懲役または30万円以下の罰金、報告義務違反では30万円以下の罰金。石綿則違反では6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
みなし含有での除去は法令違反になりませんか?
なりません。事前調査で「分析を行わずアスベスト含有とみなして除去する」ことは大防法・石綿則上認められています。ただし、その場合の工法・養生・処理はアスベスト含有を前提とした基準を満たす必要があります。
記録の保存期間はどれくらいですか?
事前調査結果記録は工事終了後3年間、石綿則による作業記録は40年間(労働者の健康管理のため長期保存)が義務付けられています。

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